京都産業大学 様

4年間で100冊以上読んで、感想を書く
“むすびわざブックマラソン”
BOOK MARRYで感想を共有し学びを深める


「むすびわざブックマラソン」は、京都産業大学文化学部で行われている読書推進活動だ。在学中の4年間で文学、歴史、思想、京都をテーマにゼミに関わる100冊の本を読み、レビューを書くことを目的としている。読書という個人的なインプットをレビューという形でアウトプットすることで、皆で読書体験を共有し、学部の学びを深めることができる。従来は紙やExcelを使ってレビューを提出していたが、学部内でのレビュー共有を実現するために文献レビューアプリ「BOOK MARRY」を導入。学生や教員がレビューを共有できることで教育の向上に役立ち、さらに担当教員の管理業務等の負担の改善にもつながっている。

お客様プロフィール

京都産業大学 様

【所在地】
京都市北区上賀茂本山
【概要】
1965年から50年以上の歴史を持ち、現在では10学部18学科10研究科に約15,000人の学生が在籍。「むすびわざ」という言葉は、「産業―新しい業(わざ)をむすび、そして新しいものを産み出す」という意味を持ち、創設者の荒木俊馬が大切にしてきた精神を表している。

BOOK MARRYを選んだ理由

  • スマートフォンのアプリなので、誰もがいつでもどこでも利用できる
  • 同学部の大学生と教員だけのクローズドな環境で、レビューを共有
  • 学部推薦図書の表示・閲覧など、大学の利用に沿った仕様が可能

ブックマラソンの課題解決に向けて
文献レビューアプリBOOK MARRYを導入

「むすびわざブックマラソン」(以下、ブックマラソン)の発足の理由について、文化学部 国際文化学科 教授の大平睦美氏は次のように説明する。「文化学部では、学生に積極的に本を読んでほしいと考えています。本は読むだけでは終わらず、読後のアウトプットも大切です。また、文章での表現が苦手な学生も増えているため、読んだ本のレビューを文章で書くことで、作文能力の向上を目的としてこの活動を始めました」

当初のレビューは紙に記載して提出する形式だったが、紙は管理するための負担が大きく、Excelを使った提出方法に移行した。しかし、一部のPCでは利用できず、大学のコンピュータ室でレビューを書かなければならない学生もいた。

大平氏は「当初の企画コンセプトは、レビューを共有し、本を通じたコミュニケーションができることと考えていました。そのためアウトプットを皆で共有したいという思いがあったのですが、紙の運用では難しく、Excelでもレビューを共有することができませんでした」と振り返る。アプリなどの利用も視野に入れたが、オープンな共有しかできないことがネックとなり、ブックマラソンが次のステップに進めない点にジレンマを感じていたという。

2019年、文化学部は、ブックマラソンについて展示・紹介を行うため「図書館総合展」のポスター発表に参加した。この展示会で「日本事務器賞」を受賞したことをきっかけに、ブックマラソンの課題を解決する日本事務器と出会うこととなる。大平氏は「学部内だけでレビューを共有するための方法を模索していた時、図書館総合展で日本事務器から文献レビューアプリ『BOOK MARRY』を紹介されました。BOOK MARRYはクローズドな環境でのレビュー共有が可能なアプリであると聞き、これならば先生や学生でも気軽に使えると考え、試験的に導入することにしたのです」と語った。

当時、BOOK MARRYは開発段階であったことから、大平氏らと日本事務器はアプリの機能や使い方などを中心に何度も議論を重ね、文献レビューアプリの構築を目指した。アプリのUIなどの細かな部分の要望に対しても、日本事務器は実現可能かどうかの可否を明確にしながら開発を行っていった。

やがてBOOK MARRYは2022年6月に一般向けに提供が開始され、文化学部には同年正式導入。ブックマラソンのレビュー環境としての利用が始まった。

「BOOK MARRYの導入によって、レビューの管理業務がほぼ不要になりました。これまでは、学生の投稿本数、1レビューにつき150文字以上の文字数カウントなどの管理作業が必要でしたが、現在は学生の書くレビューに必要情報が表示されるようになっています」(大平氏)。

また、「アプリを開けば、新しいレビューが上がったことがすぐに分かります。学生が読んでいることや書いていることがリアルタイムで見えるのは非常に良い点です」と続け、ブックマラソンの動きを体感できる点も大きなメリットと強調した。

ブックマラソンの企画の委員長も務める文化学部 国際文化学科 准教授の梶原洋一氏は、授業でのBOOK MARRYの積極的な活用について次のように紹介する。「1つの本に対してそれぞれの学生にレビューを書かせ、それを授業中に共有しあい、各自のレビューに対する感想を述べるという使い方をする先生もいます。レビューを集めて議論するという教育的な活用がなされています」

昨年度、大平氏が部局長会でBOOK MARRYについて大学に報告した際には「他学部からも『あれは面白いね、いいね』という声や、附属図書館からも『あのアプリに興味がある』と好評価でした」と語った。

学生向けに常に開放されているむすびわざブックマラソンの事務所

文化学部 国際文化学科 教授/図書館長 大平 睦美 氏

【BEFORE】

  • 感じたことを他者に伝えるため
    文章で表現する能力の育成が重要

    自らが感じたことを言語化し、文章として表現することが苦手な学生も増えているため、読んだ本の、レビュー作成でアウトプット力を強化したい。
  • 紙やExcelレビューの管理は
    煩雑な業務が負担となる

    レビューの投稿数や既定の文字数、投稿者の人数等の管理が、紙やExcelファイルでは手間が多く、学生側も全員参加が困難という課題を解決したい。
  • レビューの共有は学内限定とした
    クローズドな環境で行いたい

    他社製品のレビューシステムは一般公開が基本で、ブックマラソンという学部の教育目的に沿った、クローズドな環境で利用できるものを使用したい。

「VOICE」学生の声

CASE│1
「むすびわざブックマラソン」で、本を読んでレビューするという経験を初めて体験しました。BOOK MARRYなら、レビューを容易に確認できて自分の本への思いが明確にしやすい。これからは読んだら必ずレビューしようと心に決めました。

CASE│2
お気に入り登録している本に他の人がレビューすると、BOOK MARRYから通知が届きます。他の人はどんな感想を抱いたか、気になるのですぐに確認します。これはBOOK MARRYのとても良い点だと思います。

アプリでレビュー投稿や共有が容易に
使いやすさからレビュー数も増加傾向

現在、文化学部では全員がブックマラソンに参加しており、BOOK MARRYのアカウントや使い方も4月のガイダンスで全員に周知されている。今回、ブックマラソンで積極的にレビュー投稿を行っている文化学部の城本啓太さんから話を聞いた。「2年生の冬に受けた講義の中で、先生から指定された図書を1冊読んでBOOK MARRYにレビューを投稿する課題を出されました。元々レビューを書いたことはなかったのですが、本を読んで感じたことや考えたことをレビューとしてアウトプットしてみると、本への理解がより深まったように感じました。それ以来、本を読んだら必ずレビューを投稿するようにしています」とのこと。城本さんはその後、4年生までの2年間で約100冊以上のレビューを投稿している。

BOOK MARRYでは、お気に入り登録した本に他の人がレビューを投稿すると通知が届く機能が備わっている。その機能に対し城本さんは、「自分のお気に入りの本について 他の人が何を考えたのかが読み取れるところが面白いです。本のレビューを通して、コミュニケーションをしている感覚にもなります」と語った。

大平氏と梶原氏は、こうしたレビュー環境の活用には、ブックマラソンの意義やBOOK MARRYのメリットを、学生に対してガイダンスでの紹介が有効だと述べた。「一昨年度まではコロナ禍の影響でブックマラソンやBOOK MARRYを含む図書館のガイダンスはオンラインで行っていました。しかし昨年からは春学期のはじめに全学年に対して対面で行えるようになったことで、アプリ画面を見せながら説明をしたり、アプリを実際に触ったりできるようになりました。そのおかげか、1、2年生のレビュー率はオンラインだった3、4年生よりも非常に高いのです」(大平氏)。梶原氏も「昨年は、1年生の内2冊以上レビューした学生が半数以上おり、これは前年よりもかなり多い数値となっています」と加えた。

このように「アプリによる使いやすさ」と「オンライン上での投稿と共有」を備えたBOOK MARRYは、文化学部と日本事務器の協力の賜物である。大平氏は「日本事務器にはさまざまな要望をしましたが、できることはできる、今できないことは次のアップデートで考えたいなど、きちんと対応していただけたのはありがたかったです」と評価した。梶原氏も「学部の推薦図書をBOOK MARRY内で紹介する機能は、こちらの要望で追加できるようになりました」と対応の様子を紹介した。

さらに次のバージョンでは、学生のレビューに対して先生が個別にフィードバックできる機能が実装される予定である。これまでは一部の教員にのみアカウントを付与していたが、教員からの希望を受け、全教員分のアカウントを作成し、参加が可能になった。

文化学部 国際文化学科 准教授/「むすびわざブックマラソン」委員長 梶原 洋一 氏

【AFTER】

  • 学生の「使いやすさ」を重視した
    直感的に操作できるアプリの活用

    アプリを使って容易にレビュー投稿ができるようになったことで、学生からのレビュー投稿数が増加。読書を通して思考を言葉にし、文章として洗練させて伝える能力の養成を支援。
  • レビュー数や文字数の確認など
    煩雑な管理作業が一切不要に

    投稿数など数字のデータはBOOK MARRY上で全て確認が可能になり、管理作業が激減。レビュー数が多い本は学生の興味を誘うなど、読書を促す効果へも期待。
  • 学内限定でのレビュー共有・活用で
    ブックマラソンの目的に沿った環境を実現

    アプリを使っていつでもどこでもレビューの投稿・共有が可能に。他者のレビューもすぐに見られるので、本によるコミュニケーションというブックマラソンのそもそもの目的を達成。

BOOK MARRYでレビューを蓄積可能
これからのデジタル時代の貴重な礎に

2024年夏の時点で、同学のBOOK MARRY上には投稿者が478人、レビューが1,612本集まっている。多様なレビューを集めて学生が議論する新たな形式の授業も行われている。

梶原氏はデジタル分野での活用に大きな期待を寄せているという。文化学部は2026年に組織変更を予定しており、その際にデータサイエンスやデジタル人文学を大きな柱として取り入れる考えがある。これは、今後デジタルデータ・システムが社会において非常に重要になることへの対応だ。

またレビューに関しては、短い言葉で自分が感じたこと、伝えたいこと、気になったポイント、なぜそう感じるかなどを記載すべきと示唆されている。梶原氏は、このようにレビューは本の感想だけでなく、学生の学習傾向や興味関心の傾向を如実に示していると言い、BOOK MARRY上にレビューが大量に蓄積されている状態について「BOOK MARRYのデータはデジタル人文学の授業の教材や研究データとしても展開できると期待しています。これは文化学部にとって大きな一歩です。将来の学びのためにも、BOOK MARRYでレビューをどんどん蓄積していきたいです」と語った。

大平氏もこの意見に同意し、さらに学部として対応することの重要性を述べた。「ブックマラソンは学部で直接指導する教員が、読むだけの読書ではなく学問とつなげていくように、BOOK MARRYなどのプラットフォームを活用して丁寧に学生に伝えることが大事だと思います」と述べた。

「むすびわざブックマラソン」は、自らの想いを言語化して文章で表現する能力を鍛えるために始まったものだが、BOOK MARRYの活用を踏まえ、デジタル人文学のための強力なアシストを提供する存在になりそうだ。

学生自らが作成したブックマラソンの攻略ガイド

京都市北区に位置する一拠点総合大学の京都産業大学

※ 取材日時:2024年7月
※ 本事例中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞および製品名等は、閲覧時に変更されている可能性があることをご了承ください。