医療法人社団善仁会 小山記念病院 様
「患者様とご家族の安心につながる医療の最適化、外来患者数1日あたり1,000人への対応、病院で働く医療従事者の労力軽減につながる業務の最適化のため、日本事務器と一緒に病院DXに取り組んでいます」
医療法人社団善仁会小山記念病院院長 池田 和穂 氏、事務長 花香 淳一 氏、医事課 医療情報管理係 主任 坂本 啓太 氏に、日本事務器と取り組む病院DXの背景と効果などについて詳しく伺いました。
お客様プロフィール
医療法人社団善仁会小山記念病院様地域の信頼を高め、地域とともに発展する病院を目指す茨城県鹿嶋市の地域中核病院。同院の大きな取り組みは「地域医療連携」「救急医療体制」「がん診療」の3つ。「地域医療連携」においては、地域の医療機関との連携を充実するために地域医療連携室を設置し、他の医療機関からの紹介対応、または近隣医療機関への紹介を行っている。「救急医療体制」においては、鹿行地域で月約300台の救急車を受け入れるなど、二次救急指定病院として地域医療に貢献。
チーム医療と院内の事故防止活動を通じ、医療の質の向上に努める「医療安全対策」にも積極的に取り組んでいる。さらに、厚生労働省指定の「地域がん診療病院」として個々の患者に適したがん治療を提供。
病院名 | 医療法人社団善仁会 小山記念病院 |
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理事長 | 小山 典宏 |
病院長 | 池田 和穂 |
所在地 | 〒314-0030 茨城県鹿嶋市厨5-1-2 |
病床数 | 224床 |
診療科 | 内科、消化器科、循環器科、外科、乳腺外科、甲状腺科、整形外科、脳神経外科、呼吸器外科、呼吸器内科、産婦人科、泌尿器科、眼科、形成外科、皮膚科、新生児科、リハビリテーション科、放射線科、麻酔科、口腔外科 |
【これまでのDXの取り組み】
電子カルテシステム導入とともにDXを拡大
これまでのDXの取り組みを振り返っていただけますか。
2002年にこの地に当院が新築移転してから、しばらくはオーダリングシステムを使い続けてきました。DXが大きく進んだのは、2016年に電子カルテシステム「MegaOak-MI・RA・Is/PX」を導入してからです。電子カルテシステムを中心にさまざまな部門システムを構築してきました。まだまだ改善の余地はありますが、診療を含む各種業務を最適化する基盤として、今後も改善と拡大を図りながらシステムをフル稼働させていく所存です。
【日本事務器に任せている理由】
継続的な伴走支援に満足
日本事務器との関係性についてお聞かせください。
2002年のオーダリングシステム導入からの長いお付き合いになります。以来、現在まで当院のDXに関するコンサルティングや提案、システムインテグレーションの大部分を担っていただいています。日本事務器に当院のベンダーをお願いしている理由は、当院に寄り添っていただける伴走支援にあります。毎月欠かさず定例会を開催し、お互いに顔を合わせながら、医療と業務の最適化についてディスカッションする機会を設けていただいている日本事務器には大変感謝しています。
もちろん、他のベンダーを検討したことはあります。とくに2016年の電子カルテシステム導入時は、数社のベンダーを比較・検討しました。しかし、当院の仕組みや方針を理解し、素早くリクエストに応えてくれる日本事務器以上のベンダーはありませんでした。2022年5月には「MegaOak-MI・RA・Is/PX」から「MegaOak-MI・RA・Is/AZ」へ電子カルテシステムをレベルアップしましたが、このときはベンダーの比較・検討も行っていません。日本事務器の対応と現在の関係性に満足しており、現在も継続的な伴走支援をお願いしています。
院長 池田 和穂 氏
【現在のDXの取り組み】
取り組んできた病院DXの数々
「MegaOak-MI・RA・Is/AZ」へのレベルアップ時は、DXが大きく進んだと伺っています。その取り組みについて詳しくお聞かせください。
入院および外来の患者様のため、当院で働く医療従事者のため、いくつもの取り組みを実施してきました。以下がその取り組みとなります。
<後払いサービス>
課題:院内での待ち時間
長い時間、院内でお待ちいただいていることを、以前から心苦しく感じていました。先ず導入したのは、少しでも診察待ち時間を軽減するため、初診の方に対するAI問診システムでした。スピーディーな問診が可能になるだけでなく、手書きの煩わしさや問診票の回収の手間も軽減できましたので、患者様と我々の双方にメリットがあったと感じています。また、日本事務器のインテグレーションにより、問診内容が「MegaOak-MI・RA・Is/AZ」内で利用できる仕組みを構築しました。これも医師からは好評を博しています。
以前は診察後のお会計もお待たせしている状況でした。この状況を打破すべく、2018年には3 台の自動精算機を導入しました。さらにより良い施策はないかと模索し、たどり着いたのが料金後払いサービスの導入でした。
期待:手数料を病院負担にして活用を促進
待ち時間短縮に期待できる施策と考え、「MegaOak-MI・RA・Is/AZ」のレベルアップを機に「後払いサービス」を導入しました。当院の医事会計システムと連携し、「後払いサービス」のアプリでオンライン決済が行える仕組みで、診療が終われば会計を待たずに帰宅することができます。エントランスの待合室付近に、院内アプリサポートブースをメーカーさん主導で設置していただき、サービスの活用促進にも努めています。しかし、現在のところ、浸透速度は緩やかな状況です。
さまざまな理由が考えられますが、もっとも大きな理由は会計の都度、サービス利用料が患者様側に発生してしまうことにあると考えています。そこで、2024年2月からはサービス利用料を当院が負担することにしました。これにより、患者様はサービスを無料で利用できるようになります。さらに、外来患者様だけでなく、入院患者様にも「後払いサービス」の利用を拡大します。将来的には電子処方箋との連携も考えており、引き続き「後払いサービス」の活用促進を続けていくつもりです。
事務長 花香 淳一 氏
<長期署名システム&電子署名システム>
課題:書類の保管と管理
電子カルテが運用されても、検査や手術の同意書など、原本保管が必要な書類は大量に残ります。紙カルテ時代の同意書などは「複写式」になっており、原本は当院で保管、写しを患者様にお渡しする仕組みでした。こうした書類は法律に基づき、一定期間保管する必要がありますが、書類によって保管期間が異なるため、一度保管してしまうと業務の忙しさと相まって整理整頓が追いつきません。そんな書類の山となった保管スペースから書類を探す場合、非常に大きな労力がともないます。そこで考えていたのがそれらの書類のペーパーレス化です。
効果:紙を介在しない仕組みを構築
日本事務器と協議し、長期署名システムを導入しました。電子署名とタイムスタンプを組み合わせ、データに原本性を付与する電子化の仕組みにより、長期間にわたって証拠性を証明することができます。これによって、紙書類はスキャン後に廃棄が可能です。しかし、紙自体は存在しているため、ペーパーレス化という意味では一歩手前といった状況でした。紙に出力する手間自体をなくすため、さらに導入したのが電子署名システムです。タブレットに同意書などを表示し、その画面上で署名すれば、長期署名システムと連携し原本として保管が可能になります。これにより、紙を介在しない仕組みを構築することができました。
ただし、既存の紙書類を電子化するとなると、途方もない労力が必要になります。これらの紙書類については必要な期間保管し続けますが、少しずつ紙を削減していければと考えています。
タブレットの入院同意書に記入する電子署名システム
<「MAPSCHART」>
課題:病床状況のモニタリング
「MegaOak-MI・RA・Is/AZ」のレベルアップと同時に、BIによって数字を指標化するツール「MAPSCHART」を導入しました。このとき、どの端末からもリアルタイムに病床状況が分かるようにしたいと考えました。しかし、端末数百台のライセンス費用が発生してしまうため、日本事務器に相談させていただきました。解決策として提案いただいたのが、ブラウザを通じてどの端末からも病床状況を確認できる仕様です。この仕様であればライセンス費用が発生しません。
効果:病床管理の意識向上に貢献
病床状況はもちろん、多くの情報をリアルタイムに把握できるようになり、看護部門や事務部門などに対して、良い判断材料を提供できたと思っています。また、看護師の病床管理の意識向上に役立てればと考えています。この機能は「MAPSCHART」に標準搭載されたとのことで、他の医療機関でも活躍していると伺っています。当院としても嬉しい限りです。
もちろん、「MAPSCHART」が持つBI機能も重宝しています。導入前まではレセプトを締めたあとに経営指標が分かる状況でしたが、現在は医事会計システムと連携してタイムリーにデータを取得できます。前日の経営指標をすぐに把握できるようになりました。さまざまな経営指標をタイムリーに可視化できることが重要と捉えており、具体的な活用方法については思案していきたいと考えています。
<ベッドサイドモニター>
課題:病床における患者様と看護師の利便性
患者様と看護師のサポートにつながる施策として、ベッドサイドモニターと電子カルテシステムを連携する仕組みを構築しました。現在は224床すべてに設置しています。
効果:ベッドサイドモニターで医療情報を共有
ベッドサイドモニターの活用により、患者様は院内情報から自身の検査結果などのさまざまな情報を入手可能となりました。看護師にとっても、その場で患者様の医療情報を把握できるため、医療安全面が大きく向上しました。会話が困難な患者様の場合、情報の確認に手間取ることもありましたが、ベッドサイドモニターでカルテ情報を調べたり、医師や看護師に確認する必要もなくなり、時間を有効活用できるようになったのが大きな効果だと感じています。
電子カルテシステムと連携するベッドサイドモニター
【DXに取り組む理由】
スピード感を重視する経営層もDXを支援
DXに積極的に取り組む理由についてお聞かせください。
新築移転した当時から外来患者数は約5倍に増え、毎日1,000人近くの方が来院されます。物理的なキャパシティは一杯になりつつあり、DXによって最適化を推進しなければ、病院運営にも影響が出てしまいます。そこで、患者様とご家族様の安心につながる医療の最適化、病院で働く医療従事者の労力軽減につながる業務の最適化のために、システムは常に新しくしたいと考えています。幸い、当院の理事長や院長はDXに理解があるため、感度の高いアンテナを立ててデジタルを取り入れていく現場の姿勢については、積極的に支援いただいています。
また、DXと並行し、自席に縛られない自由な働き方、ペーパーレス化などを促進するフリーアドレスを医局に導入しました。明るく開放的で業務に集中できる医局ですから、より良い医療を提供するためのスペースとして機能するのではないかと期待しています。
医事課 医療情報管理係 主任 坂本 啓太 氏
今後の展開と日本事務器への期待をお願いします。
2024年3月には、患者様自身の検査結果や処方情報を参照できるPHR(Personal Health Record)アプリシステムを導入する予定です。患者様自身で、健康管理や生活改善などに利用していただければと考えています。また、2024年4月からはベッドコントロールシステムも稼動予定です。「入院が必要な方の受け入れ態勢」を整えるため、より一層きめ細かなベッドコントロールを行っていくつもりです。
また、当院はとにかくスピード感を重視しています。当院のスピーディーな決裁を受け止め、スピード感を持って当院のシステム構築にあたってくれる日本事務器には、繰り返しになりますが、大変満足しています。この体制を維持しつつ、引き続き当院のDX推進に伴走支援をお願いいたします。
フリーアドレスを導入した明るく開放的な医局
※ 取材日時:2024年1月
※ 本事例中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞および製品名等は、閲覧時に変更されている可能性があることをご了承ください。