■学校概要
1962年 九州女子大学を開設。
家政学部、人間科学部の2学部で構成されており、令和5年4月開設に向けて、学科の改組を文部科学省に認可申請中です。
建学の精神「自律処行」に則り、社会で活躍する女性の育成を目指した教育活動を行っており、真摯で柔軟に物事に取り組むことのできる「強くてしなやかな女性」の育成を目的としています。次年度より、「副専攻」を導入し、図書館司書の資格が、全学科で取得できるようになります。
■「びぶりこっと」とは
「びぶりこっと」とは、九州女子大学 人間科学部 図書館司書課程の活動名。
対外的な活動をする際、「九州女子大学人間科学部図書館司書課程」だと長く漢字ばかりで、どうしても堅いイメージになってしまう。もっと覚えやすく、女子大生らしい可愛い名前をつけたいということで、学生さんたちでこの「びぶりこっと」というグループ名を考えたそうです。
由来は、日本語で書誌を意味するラテン語の「ビブリオ」と、九州女子大学様の学花である梅の英語「Japanese apricot」から、響きの良い「cot」の部分を組み合わせたもの。英文字標記でもカタカナでもなく、あえてひらがなにしたのは、可愛らしいイメージと音の響きの印象からとのこと。
可愛らしく目を引くデザインのロゴも、プロのデザイナーが作成したものか見間違うほどですが、すべて学生さんの手によって制作されています。
■ポスターセッションと授賞理由
昨年に引き続き、オンラインでの開催となりました2021年度の「図書館総合展_ONLINE_plus」では、様々な工夫を凝らした発表がありました。ポスターセッションでも、オンラインなので展示方法は様々です。総合展事務局から割り当てられたウェブページ上で、動画を載せたり、テキストをデコレーションしたりして、デジタルならではの読みやすさを意識されている団体が多く見られます。
そのような中、九州女子大学 人間科学部 図書館司書課程様は、「奇想天外な発想力 ~びぶりこっと活動記録~」というとても興味を引くタイトルと、沢山の写真を用いた読みやすく分かりやすい内容で出展されていました。
■図書館総合展ポスターセッション 九州女子大学様
https://2020.libraryfair.jp/poster/2021/64
■びぶりこっと くりえーたーずの活動はこちらから!(YouTube「びぶりこっとチャンネル」)
https://www.youtube.com/channel/UCSqJKvrkIxZvwTltxd_oFuQ/featured
具体的な発表内容としては、司書課程の「情報サービス演習Ⅰ」で、学びの活動の一環として行われた展示制作の詳細が中心。また、それがきっかけとなり行われた、地元書店と連携しての書店店頭での展示制作の様子が、企画から展示まで、そして活動の振り返りまでをこと細かに取り上げていました。
このたび日本事務器賞をお贈りいたしました理由は3点。まずはポスターの内容です。授業風景や企画のミーティング、展示活動の様子がつぶさに見られ、そのどれもが学生さんの自ら考えながら手を動かした取り組みであること。次に、他ではあまり例のない「司書課程としての取り組み」であるところも選定ポイントの一つとなりました。最後に、書店での展示制作という地域連携活動において、実施した書店からも高評価を得ているという点から、授賞を決定いたしました。
■日本事務器賞贈呈式
2022年3月14日(月)、福岡県北九州市にある九州女子大学へお邪魔し、賞状と記念品の贈呈を行いました。
贈呈式を検討した時期は、まん延防止等重点措置期間中であったことからハイブリッド開催を決定。NJCから代表の1名が直接訪問し、2名がオンラインでの参加という形で開催いたしました。
贈呈式には人間科学部の友納艶花学部長や人間発達学科の宮本和典学科長、鄭俊如先生をはじめ、展示制作活動が行われている「情報サービス演習Ⅰ」を担当されている矢崎美香先生と司書課程履修中の学生さんに大勢ご参加いただきました。
緊張や喜びの入り乱れる中で、友納学部長からは、「びぶりこっと」の皆さんへ今回の活動や授賞、それから1年を通じて実施してきた学生さんたちの目ざましい成長に対して、賛辞の言葉が送られました。
図書館総合展へは今回が初めてのご参加にも関わらず、出展団体賞を受賞したため、学生の皆さんも驚きと共に喜びもひとしおだったようです。先生方からは、この受賞が学生のこれからの自信になり、新たな目標と学びを生み出すことに繋がるとのお話もいただきました。
贈呈式後は、場所を普段から活動に利用している部屋に移し、緊張から解き放たれて和やかな雰囲気の中で「びぶりこっと」の活動を通して学んだこと、苦労したこと、次にやりたいことなど詳しくお話を聞かせていただきました。
■書店展示について
書店展示は、大正12年に創業され、長く地元である北九州市八幡西区の書店として親しまれてきた白石書店様よりご協力の申し出があり、3つの店舗で行われました。
例年、「情報サービス演習Ⅰ」の授業内では、大学図書館での展示制作が行われておりましたが、コロナ禍では、図書館での展示が行えなくなってしまいました。そこで、やむを得ず校舎内の廊下で展示を実施したところ、学内でかねてよりお付き合いのあった白石書店様の目に止まることに。学生のリアルな時事感覚や制作スキルの高さを認識され、店頭での展示ができないか相談をいただき、学外での展示が決定したとのことでした。
学生さんたちも、外部の方々が注目し、期待してくれたということが励みになり、活動意欲をさらに加速させたようです。
展示テーマについては、書店さんからの希望と、学生の企画をすり合わせて「なつかしシリーズ」に決まりました。各店舗ごとに合わせた目標設定、デザインイメージを行い、学生さんたちが一から企画書を作成し、白石書店の各店長さんとの打合せに臨んだと伺い、大変驚きました。
学生さんたちはデザイン担当、POP担当、制作担当とグループを分け、進捗の遅れがあれば互いに助け合うといったチームワークを発揮しての作業が行われました。コロナ禍により来日ができず、中国から授業に参加している留学生もいましたが、授業前の雑談の時間を設け、ビデオ通話をしながら学内の様子を見せて回るなどコミュニケーションを意識しながら日本在住の学生と動画作成を進められたそうです。その留学生は「最初は本当にやっていけるのか不安だったけど、クラスメイトの一員として、教室内にいるように接し、サポートしてもらえたことで不安はなくなりました」と話していました。
実際に一連の活動を振り返ってみて、学生さんからは「やりきった」感の伝わってくる感想をいただきましたのでご紹介いたします。
「外部のお客さんからどう見えるか、常に考えて動いたことで、客観的に物事を考える癖がついた」
「周りの意見や考えを聞いて、多角的な考えが身についた」
「自分はすぐ行動に移したい性格で、周りを見ていない事が多かった。活動を通して、周りを見て、必要に応じて周囲の人と合わせて行動することを学んだ」
周りの学生との協働の中で、自分自身への理解や、協調力がより深められたようです。びぶりこっとで学んだことを、社会に出てからも活かしていきたいと語ってくれました。
実際の展示を置いた、白石書店の3店舗の店長さんからもコメントを頂戴しました。
「とても見やすく、入ってこられたお客様の目につきやすい展示で大変満足している。今回は、打ち合わせから制作までの期間が短かったので、学生にお任せしきりになってしまった部分もある。次はもっと早い段階で展示についての打ち合わせを行い、学生と共に案を出し合って一緒に考えてみたいと感じた」
「特に色合いが美しく、足を止めてくださるお客様が多く素晴らしい展示だった。書店側が思いつかない、学生らしい展示方法だったと思う」
「お客様が本を手に取っていただける頻度は高く、好評な展示だった。SNSで完成した展示の動画や写真をあげたところ、反響があり、他の店舗とはまた違う良さを持つ展示だった」
きっと書店を訪れたお客様にも、展示に込められた学生さんたちの熱意が伝わったのではないかと思います。
また、書店で飾った展示は、ほとんどの学生さんが写真に撮ってご家族や友人の方に見せたようで、「すごい展示だ」と褒められたそうです。大学生ともなると、学習の成果を身近の人に見せて評価してもらえることが少ないですよね。それができたのも今回の活動の良いポイントだったのではないかと感じました。
■これからの活動
次回の図書館総合展への出展は未定のようですが、引き続き近隣の公共図書館や書店様との協同取り組みは行っていきたいとのご意向を伺いました。
実は、びぶりこっとの参加者は主に3年生。3年生だけではどうしても手が足りないこともあるため、4年生にも活動を支えてもらっています。次年度は自分たちが4年生になるので、後輩をサポートしながら、計画を考えていきたいとのことです。
学生さんに「もう一度書店展示を行えるとしたら?」とお伺いしたところ、「今回は白石書店様にて本を選定いただき展示を実施したが、次の機会では選書から自分たちで行い、お客様と本をどのように繋げられるかをやってみたい」などと意欲的な回答があり、志の高さをとても感じました。
今年度の活動を支えた4年生の学生さんからは「自分たちが活動していた時より急に活動範囲が広がったので大変だと思うが、せっかくの機会なのでこれからも挑戦してみてほしい。大人数での活動となるので、チームワークを発揮し、冷静に周りを見て動く力を磨いてほしい」と後輩への期待を語ってくださいました。
■授賞式、インタビューを終えて
授賞式は非常に厳かな雰囲気の中進んでいましたが、インタビューでは一転、笑いも多く、終始和やかな雰囲気でお話をお伺いすることができました。
この和やかな雰囲気は、九州女子大学様の売りでもある「教員と学生の距離の近さ」から来るものであることも教えていただき、誰であってものびのびと意見が言いやすい、とても良い関係の中で活動を進められているのだなと感じました。
インタビューの中で学生さん全員に活動を通しての感想を伺い、この1年を振り返っていただきました。一人ひとりが自分の長所、短所と向き合い、チームでの活動に必要なものは何かを自分なりに考え、身につけていったびぶりこっとメンバー。
「情報サービス演習Ⅰ」で実践的に行われている活動は、確実に学生さんたちの経験値を上げ、社会に出てすぐに使える力を養っているものと思います。
何よりも、学生さんたちにそれぞれ違う環境や考えがあり、時間や場所の制約もある中、一人ひとりが「みんなでやろう」という意識を強く持っていたこと。誰かに任せきりになるのではなく、それぞれ考えて行動し、また、役目に固執しすぎずにチームワークを発揮しながら展示物を作り上げていったことに、感銘を受けました。
自分たちで目標を設定し、考え、皆で補いながら解決していくことは、これからの社会に必須な力だと思います。びぶりこっとの活動は、そういった力を養なう良い機会であったのではないでしょうか。
2022年度の活動についてはまだ決まっていない部分も多いとのことでしたが、是非これからも、大学と学生と社会をつなぐ協同企画を続けてほしいと思います。
びぶりこっとの皆さま、貴重なお時間をいただき誠にありがとうございました。
※ 本事例中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞および製品名等は、閲覧時に変更されている可能性があることをご了承ください。
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